生体防御システム
  現代社会を生き抜くチカラ「生体防御システム」の4つの機能
私たちを取り巻く環境は、さまざまな危険に満ちています。
ストレスや公害、そしてウィルスや細菌など、私たちの気付かないところで忍び寄ってくる、たくさんの魔の手があります。
それでも健康でいられるのは、私たちの体に備わった「生体防御システム」が正常に働いているからです。
「生体防御システム」とは体を守るチカラのことで、その機能から4つに分類することができます。
健康な時は、生きていることや、体が機能していることを当たり前と思ってしまいがちですが、私たちの体は日々いろんな手段を使って、今の環境を生き抜いているのです。

@ 【抗酸化システム】   活性酸素などによる生体膜などの酸化損傷を予防
酸素は生命活動に必須のものですが、実は毒にもなることをご存知でしょうか。
酸素を有効に利用しながら子孫繁栄してきた生物を「好気性生物」といいますが、その生物たちが体内で生じる「活性酸素」の毒性に対抗するための機能が【抗酸化システム】なのです。
抗酸化システムは『抗酸化酵素』と『抗酸化物質』の2つによって行われます。
抗酸化酵素には、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼ、グルタチオンペルオキシターゼなどがあります。
これらは協力して活性酸素を安全な「水と酸素」などに分解し、日々、私たちの体を防御しています。
これらの酵素の働きには銅・亜鉛・マンガン・鉄・セレンといったミネラルが欠かせません。
また抗酸化物質は、抗酸化酵素では処理できないヒドロキシラジカルという活性酸素を解毒します。
代表的なものにビタミンA・C・E・β−カロチン・尿酸などがあります。
尿酸は痛風の原因物質として悪者扱いされてきましたが、最近は強い抗酸化性が注目されています。
尿酸を除くこれらの抗酸化物質は体内で合成されないため、日々の食事から摂取することが重要です。
活性酸素は細胞を傷つける有害物質ですが、一方では免疫細胞がウイルスや病原菌と闘う時の強力な武器にもなります。
つまり活性酸素は私たちにとってまさに「諸刃の剣」なのです。

A 【遺伝子修復システム】
  傷ついた遺伝子を正常な状態に修復
【抗酸化システム】によって、私たちの体は活性酸素の害を防御していますが、どうしても防ぎきれずに遺伝子が傷ついてしまうことがあります。
そんな損傷を修復してくれる機能が【遺伝子修復システム】です。
遺伝子の修復は「修復酵素」によっておこなわれます。
 (修復酵素による遺伝子修復)
●「DNAグリコシラーゼ」が、傷ついた遺伝子(塩基)を発見。
●「APエンドヌクレアーゼ」と「エクソヌクレアーゼ」が、損傷箇所を除去。
●「DNAポリメラーゼ」が、新たな塩基を運んで正常な状態に復元。
●「DNAリカーゼ」が、復元されて塩基と対の塩基を結合させて遺伝子修復が完了。
多くの場合、遺伝子の損傷は修復酵素によって修復され、大事に至らずに済みます。
しかし、適切に修復できなければ細胞が突然変異を起こしてガン化したり、細胞機能が損なわれたりする可能性もあり、遺伝子修復システムが低下すれば、発ガンなどの危験性は増大します。

B 【アポトーシス】
  大きな傷を受けた細胞を自殺させ、被害を食い止める
遺伝子の傷は、少しなら【遺伝子修復システム】によって修復しますが、壊れ方がひどく修復不能だったり、修復が不完全だったりすると異常細胞が発生し、その異常細胞が増殖すると、組織や器官の機能低下を招いたり、やがてガン細胞となって命を脅かすことになりかねません。
そこで細胞には、異常細胞の増殖を止めるために、異常細胞自らを自殺させる機能【アポトーシス(細胞死)】があるのです。
細胞の死は、それぞれの細胞の遺伝子に書かれたプログラムによって決められているといわれていますが、中でも重要な役割をもつ遺伝子に「P53遺伝子」があります。
遺伝子修復やアポトーシスには、「P53遺伝子」をはじめとした、いくつかの遺伝子が関与していることが、最新の研究で明らかになっています。
ところで、お腹の中で成長する胎児の指には「水かき」があるのをご存知でしょうか。
これが、生まれるまでに1本1本の指に形成されるのは、水かき部分の細胞がアポトーシスによってちゃんと死滅するからです。
また、オタマジャクシがカエルになるときシッポがなくなるのも、アポトーシスの働きによるものです。

C 【免疫システム】
  生体内に侵入するさまざまな外敵と闘う
【免疫システム】は、ウィルスや病原菌といった有害な侵入物から体を防御するシステムです。
体内に元から存在する「自己」と、そうでない「非自己」を判別し、有害な非自己だけを排除する機能です。
例えばくしやみや鼻水といった風邪の症状も、体内へ侵入したウィルスを吹き飛ばし、洗い流そうとする立派な生体防御反応です。
これは、免疫細胞のひとつ「ヘルパーT細胞」が放出する刺激伝達物質の作用で起こります。
免疫システムは、私たちの体に有益に機能するものですが、近年ではシステムの乱れによる「アレルギー疾患」や「自己免疫疾患」が急増しています。
生活環境の悪化や生活習慣の乱れが主な原因といわれています。
アレルギー疾患は、一部の免疫系が働き過ぎて自分の体を傷つけるという「免疫システムの過剰反応jです。
この現象が気管支で起きるのが「喘息」、皮膚で起きると「じんま疹」や「アトビー性皮膚炎」、目や鼻で起きると「鼻炎」や「花粉症」となります。
また自己免疫疾患は、正常な自分の体を何らかの理由で非自己とみなし、攻撃してしまう「免疫システムの誤作動」です。
「リウマチ」、「膠原病」、「バセドウ病」、「腎炎」などがこれに該当し、本来、免疫を担う「白血球」が体の各所を攻撃することで発症します。